オフショア開発企業インタビュー
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【第1回】親日でも安心できない?
オフショア開発で人気急上昇のベトナム人と付き合う方法とは?
アイ・ティ・シーグループ
古川 浩規氏

アイ・ティ・シーグループ

古川 浩規氏

文部科学省で科学技術行政等に従事したのち、平成20年に株式会社インフォクラスター、平成22年にJapan Computer Software Co. Ltd.(ベトナム・ダナン市)を設立。
情報セキュリティコンサルテーション、業務系システム構築、オフショア開発を手掛けるほか、日系企業のベトナム進出に際して情報システム構築や情報セキュリティ教育等を行っている。
資格等:日本セキュリティ・マネジメント学会 正会員、情報セキュリティアドミニストレータ、日本・ベトナム文化交流協会理事

日本人と似ているがゆえの落とし穴

オフショア開発.com:日本国内では、「ベトナムは日本と良く似ている」と言われていますが、何年も日本とベトナムを行き来している古川さんの目には、実際のところ、どのように映りますか?

古川浩規氏:確かにベトナム人は日本でよく言われる通り、アジア人の中でも日本人と似ている民族でしょうね。親しくなると世話好きで、少しお節介。友人宅に呼ばれて遊びに行くと、まるで夏休みに田舎のおじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに来たかのような居心地。こういったことをベトナムで経験すると、「まるで一昔前の日本のよう。ベトナム人とならばうまくやれる」と感じることだと思います。

オフショア開発.com:でも、良いことばかりではない?

古川浩規氏:そのとおりです。日本人と似ているとはいえ、突き詰めていくと、ベトナム人は民族も風習も異なる「外国」で暮らす「外国人」です。

そのため、日本の国情や日本語に通じているベトナム人がビジネスパートナーである場合には、「日本と良く似ているやり方だし、任せても大丈夫だろう。」という安易な気持ちから、不慣れで面倒な国際的な管理業務などを次々にベトナム人へ移管したくなってくるものです。ある意味仕方がないことかもしれません。

ただ、このような状況は「要注意」です。日本側での仕事が増えることをいとわずに、「業務フローをもう一度振り返る機会」ととらえて、仕事のやり方を再考した方が良いようです。

カネが絡むと人が変わる

オフショア開発.com:それはどうしてでしょう?

古川浩規氏:ビジネスとしては当然の対応ですが、ベトナム人が仕事上の損得勘定を冷静に見ているためです。普段、曖昧な仕様のままで開発がスタートしたり、開発途中で仕様が変更されたりといった日本人同士での「あ、うん」の呼吸での業務スタイルに慣れていると、この「冷静さ」に驚くこともあると思います。「ベトナム人はカネが絡むと人が変わる」と驚く人もいるほどです。

日本のやり方が悪いと言っているわけではありませんが、国際取引であることを忘れてしまうと、日本人の仕事の進め方が「『なあなあ』での仕事の進め方」という悪い意味を持ってしまうということです。「このくらいは大丈夫だろう」「彼なら大丈夫だろう」という根拠のない楽観的な推測で事を進め、契約書も記録もないというやり方では、いつ足をすくわれても文句は言えません。

オフショア開発.com:より広い意味での「プロジェクトマネジメント」が重要だということですか?

古川浩規氏:そのとおりです。
契約書や記録もないまま仕事を進めた結果、「現地の店舗を乗っ取られた」「会社の多額のお金が消えてしまった」といった日系企業が被害を受けた話は枚挙にいとまがありません。ここまで物騒な話にならずとも、システム管理や情報セキュリティ管理上の基本である「進捗管理」や「品質管理」が不十分といったケースは、しばしば起こりえます。
しかし、日本国内でのパートナーさんへの発注に置き換えて考えても、十分なシステム管理や情報セキュリティ管理を行わずに出来上がった成果物は、当初予定していたものとは似て非なるものとなることは容易に想像がつきます。日本人同士であっても、このような事態となるのであれば、いくら日本人と民族性が似ているとはいえ、文化も風習も異なるベトナム人との間でどうなるかは、火を見るよりも明らかです。
そのため、私どもでは、このような「お客様にとっての『金額にできない管理工数』や『目に見えない手間』をいかに削減するか」という方針のもとで、開発のお手伝いをさせていただいております。

「忙しいからできなかった」が、対外的な言い訳になる場合もある

オフショア開発.com:古川さんの経験した中で、日本との違いを痛感した案件はございましたか?

古川浩規氏:ありました。弊社がベトナムに進出を果たした最初期に頂いた案件の一つです。弊社では、起きたトラブルの後処理を含めて依頼を受けたのですが、トラブルの原因を伺って驚きました。

この案件では、日本側は、まずベトナム側と「業務提携」の契約を結び、その後、初回の力試しとして簡単な案件をベトナム側へ提示しました。日本側は繁忙期であった上に、ベトナム側の社長が元日本留学生ということもあり、あえて締め切りを設けず、「時間のある時に徐々にシステムを改修し、逐次日本側へ報告する」という段取りにしたそうです。

その結果、ベトナム側からは、「いま忙しいので、また改めて実施します」という回答ばかり。結局、業務が全く進まず、当該案件はものの見事に空中分解してしまったそうです。

ベトナムにおいては、「忙しいから……」という理由が、業務上、かつ、対外的な立派な言い訳になることがあるようですので、こうした文化の違いには、注意が必要です。トラブルの基は、「日本とベトナムは、似ているけれども違う国」という基本的なルールを忘れたところからくることが多いのでしょう。

オフショア開発.com:なるほど、日本ではあまり想定しないことかもしれませんね。他になにか気をつけておくことはありますか?

古川浩規氏:「分からないから専門家に任せる」ことで一安心とするのではなく、「可能な限り自分で情報収集して事に当たる」ことでしょうね。法制度を含め、社会制度が急速に充実しつつある国です。どの日系企業や日系コンサルタント会社でも経験したことのない初めての事案を、自社で経験することもあると思います。こうなると専門家でもお手上げで、会社の判断を求められることもあると思います。


古川浩規氏とへのインタビューは、まだまだ続きます。次回は、ベトナム現地へ進出する際の留意点についてお届けいたします。

ベトナム オフショア開発企業

アイ・ティ・シーグループ


アイ・ティ・シーグループは今注目されているベトナムのダナン市を中心にオフショア開発をしており、1994年からという長年の実績とキャリアを持つシステム開発会社です。
安価で高品質なシステム開発はもちろん、Pマークの準拠、情報セキュリティ専門スタッフの配置など、セキュリティにも積極的です。ぜひお気軽にお問合せ下さい!

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