データドリブンとは – 意思決定を変革する新たなアプローチ |
公開日:2024/08/29 最終更新日:2024/08/29
データドリブンとは - 意思決定を変革する新たなアプローチ
近年、高速インターネットの普及や情報技術の進化により、かつては考えられなかったほどの膨大なデータを取り扱うことが可能となっています。そこで重要となってくるのが「データの活用法」です。データに基づいて判断を行う『データドリブン』がこれまで以上に求められています。
本テキストでは『データドリブン』の意味や定義、実践するための4つのステップなどについてわかりやすく解説していきます。
データドリブンの意味と重要性
まずは『データドリブン』の意味や重要性について理解を深めていきましょう。
データドリブンの定義
『ドリブン(Driven)』は『○○に基づいた』という意味の言葉です。
『データドリブン(Data Driven)』とはデータを収集したり蓄積したりするだけでなく、データをもとに意思決定や判断を下したり行動したりすることを言います。
これまでもデータを分析して活用することは多くの企業が行なっていたことですが、ビッグデータなど多くの情報量を取り扱うことができるようになった近年、改めて注目されている言葉です。
データドリブンが注目される理由
冒頭でも触れた通り、かつては考えられなかった膨大な量のデータを収集できるようになった現代において、データの重要性は高まり、その活用方法が大きな課題となっています。
また、インターネットの普及は消費者の価値観や行動パターンの多様化・複雑化につながり、消費者のニーズをとらえるのが以前よりも難しくなっています。
ビジネスを取り巻く環境が急速に変化する中、『データドリブン』は企業にとって不可欠なものとなっている、と言えるでしょう。
経営にもデータドリブンを活かす時代
経営者が経験や勘に基づいて経営判断を下すというのがこれまでの経営手法でしたが、近年ではデータドリブンな経営を行うことで、経営者としての経験が少なくても的確な経営判断が下せるようになりました。
ワンマン経営者の独断は、それが正しい判断であっても周囲に納得感が少ないというデメリットがありましたが、客観的なデータに基づく判断は周囲にも納得してもらいやすいため、経営者にとっても従業員にとってもメリットのある手法です。
以前は難しいものだったデータ分析ですが、近年は便利なツールも多く登場しており、知識はある程度必要とは言え、前よりも簡単に分析できるようになっています。
データドリブン経営を行うことで、意思決定の精度が向上し、結果、顧客満足度や業務効率の向上、新しいビジネス機会を発見することなど、さまざまなメリットが得られます。
データドリブンを実践するための4つのステップ
データドリブンの重要性について理解が深まったところで、この項ではデータドリブンの実践方法について解説します。
データドリブンの実践は、大きく分けて下記の4つに分けられます。
『データの収集と蓄積』
『データの可視化と分析』
『分析結果に基づく意思決定』
『施策の実行と効果測定』
それぞれのステップを詳しく説明します。
Step1: データの収集と蓄積
データドリブンはデータありきの意思決定なので、まずはデータの収集・蓄積が必要です。
データの収集方法は業種によって異なりますが、下記のようなシステムで収集できるデータが代表的です。
- 顧客情報: 顧客データベース、CRMシステム、Webサイトアクセスログなど
- 販売データ: POSデータ、ECサイトの売上データなど
- 財務データ: 会計システム、予算管理システムなど
- 製造データ: 生産管理システム、品質管理システムなど
- 人事データ: 勤怠管理システム、給与システムなど
もし、これらのデータを収集・蓄積できる体制が整っていないのであれば、まずはそれらを整えるところから始める必要があります。
また、店舗や事業所、部署によってデータを独自に収集しているケースでは、データの一元化も重要です。できるだけ多くのデータを一元管理することで分析の精度も上がりますから、一元管理できるような仕組みも整えておきましょう。
Step2: データの可視化と分析
データはそのままではただの映像や文字・数字の羅列でしかない上に量が膨大なので、分析を行って意思決定に使える形にすることが必要です。グラフや表など、わかりやすい形に可視化する仕組みを前もって構築しておかなければいけません。
例えば、『Excel』にはデータ分析の機能もあり、もっとも使いやすい分析ツールと言えるでしょう。ただ、データが膨大だとファイルが重くなる、共有の際にデータを誤って削除されたりする危険性がある、といったデメリットもあります。
データ分析に詳しい担当者であればデータ解析に特化したオープンソースのプログラミング言語である『R』を活用する方も多いようです。
ExcelとRはPCにインストールされて使える環境なら無料で活用できますが、ある程度の知識がなければ使いづらいというデメリットもあります。有料ですがBIツールやDMPなどを活用するのも一つの手です。これらのツールについては後述します。
Step3: 分析結果に基づく意思決定
可視化されたデータを分析し、施策を決定します。ツールによってはAIが分析してくれるものもありますが、社内の状況や業務について知識を持った担当者が分析を行うことが必要です。
ただデータの数字を分析して施策を作っても、自社の現状にフィットしたものとなるとは限りません。施策を実行するための予算や人員が足りない、ということもありえます。
データ分析の結果を踏まえ、現実的に実行可能な施策を決定することが重要です。意思決定を行う際には、以下の点に注意するとよいでしょう。
- 分析結果を正確に理解する
- 意思決定の目的を明確にする
- 関係者全員の意見を聞く
- リスクを評価する
Step4: 施策の実行と効果測定
施策は実行して終わりではありません。データドリブンによって生み出された施策からデータを収集・分析・改善につなげていく必要があります。
効果測定にはさまざまな指標がありますが、以下のような指標が代表的です。
- 売上
- 利益
- 顧客満足度
- 市場シェア
- 離職率
効果測定の結果に基づき、施策を改善します。このサイクルを繰り返すことで、さらに効果的な施策を実行できるようになります。
PDCAサイクルを回して常にデータをもとに改善していくことこそ、データドリブンにおいてもっとも重要なプロセスと言えるでしょう。
データドリブンを支えるテクノロジーと人材
データドリブンの実践には、テクノロジーや人材が必要不可欠です。先にも少し触れたデータ活用に役立つツールや、最近注目されているIT人材『データサイエンティスト』について解説します。
データ活用を支援するツール紹介
前述したように、データの分析にはさまざまな便利なツールがあります。データ活用を支援するツールは、大きく分けて以下の3種類です。
- データ収集・蓄積ツール
- データ分析ツール
- 機械学習ツール
『データ収集・蓄積ツール』は、顧客情報や販売データ、Webサイトアクセスログなど、さまざまなデータを収集して一元的に管理するツールです。
『データ分析ツール』は収集したデータをグラフや表など分かりやすい形で可視化し、分析を行います。『機械学習ツール』は AIによる機械学習を用いてデータから自動的にパターンや法則を抽出します。これらの機能を複合的に搭載したツールもあります。
便利なツールを活用することで、効率的にデータを収集・分析し、意思決定に役立てることができます。
BIツール、DMPとは
先に少し触れましたが、データドリブンに役立つツールとしてBIツールとDMPがあります。
BIツールのBIは「ビジネスインテリジェンス」のことで、事業の意思決定に使われる知見を指し、そのためのデータ収集や分析も意味します。つまり、経営や業務にデータを役立てるための分析・可視化ツールのことです。
DMPは「データマネジメントプラットフォーム」のことであり、データの収集と管理に使われるプラットフォームを指します。蓄積された多くのデータを一元管理し、必要に応じてセグメントして活用することができます。
代表的なツール
先述した『Excel』や『R』は無料で使える分析ツールではありますが、ある程度知識が必要です。初心者にも使いやすいデータ分析ツールとしては、多くのサービスと連携しておりデザイン性の高い『Tableau』やマイクロソフト社の『Power BI』が代表的です。
ネットワーク分析ならPythonベースの『NetworkX』や『Graph-tool』などが代表的です。
他にもさまざまなツールがありますので、予算や目的、担当者のスキルレベルに応じて最適なものを選定する必要があります。
データサイエンティストの役割と育成
『データサイエンティスト』とはデータ分析のスペシャリストです。統計学や機械学習、プログラミングなどの知識を活かし、データから意味ある情報を抽出して意思決定を支援します。近年、データサイエンティストの需要は高まっていますが、人材不足が課題となっています。
データドリブンを実践するためには、優秀なデータサイエンティストの採用や育成が重要です。
データドリブン時代に求められる組織文化
データドリブンが企業にとって必要不可欠な時代となった今、データドリブンをスムーズに進めるための組織文化の醸成が重要です。
トップのコミットメントとビジョン共有
データドリブン経営を成功させるためには、経営層がデータドリブンへのコミットメントを示し、ビジョンを共有することが重要です。
経営層はデータ分析の重要性を社員に理解させた上でデータ活用を積極的に推進する必要があります。そのためには、自身もある程度データ分析について理解しておかなければなりません。
データ活用を促進する風土づくり
企業において、従業員一人ひとりがデータ活用の重要性を理解し、積極的にデータ分析に取り組む風土がなければ、データ活用の促進にはつながりません。
データ活用を促進する風土を作るには、例えば以下のような取り組みが必要となります。
- データリテラシーの向上: 社員一人ひとりがデータ分析の基本的な知識を身につけるための研修を実施する。
- データ分析ツールの導入: データ分析を容易にするためのツールを導入する。
データドリブンは、企業が競争力を維持し、持続的な成長を実現するための重要なアプローチです。データドリブンを実践するためには、適切なテクノロジーと人材を揃え、データ活用を促進する組織文化を醸成することが重要です。
まとめ
情報技術の進化により、膨大な量のデータを扱うことができるようになった現代において、データを活用して意思決定を行うデータドリブンは経営においてもマーケティングにおいても必要不可欠なものとなっています。
AIが今後さらに進化すればすべてAI任せ、ということも可能になるかもしれませんが、まだまだ分析や施策決定には人の手が必要なのが現状です。
とは言え、ITに明るい人材がなかなか確保できないというのも多くの企業において共通の悩みとなっています。そこで、海外に目を向けて人材を活用するという選択肢もあります。
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