オフショア開発とは、システム開発業務などを海外の開発会社や海外子会社に委託することです。開発コストは人件費が占める割合が大きいので、日本国内よりも人件費が安い海外にアウトソースすることで、コスト削減が期待できます。

日本企業はこれまで主に中国にアウトソースしていましたが、近年は中国国内の人件費が高騰しており、新規オフショア開発の委託先はベトナムやインド、ミャンマー移しつつあります。
最近では日本国内のITエンジニア不足を背景に、開発リソースを確保する目的でも活用が進んでいます。その場合はコスト削減だけではなく、技術力や開発体制など総合的な観点で最適なリソースをグローバルに確保する「グローバルソーシング」の意味合いも強まっています。
オフショア開発と言っても単に開発を委託している会社が海外にあるという認識で開発を委託される会社も少なくありません。それだけ最近ではハードルが低くなってきています。
特に新型コロナウイルスの流行以降、IT開発の領域に限らずビジネス全体でリモート体制への移行が急速に進みました。そのため、海外の開発現場とリモート体制で開発プロジェクトを進めるオフショア開発への抵抗感が薄れたという社会的背景もあります。
また、オフショア開発では、日本国内拠点と海外開発拠点とをうまく連携させ、開発プロジェクトを進めます。そのため、言語や文化、商習慣といった面で円滑な意思疎通をするために「ブリッジエンジニア(ブリッジSE)」(*1)というエンジニアがコミュニケーターやプロジェクトの管理・調整などを務めるケースが多いです。
また、「オフショア開発」に似た用語として、「ニアショア開発(nearshore development」(*2)という考えもあります。こちらは日本国内において人件費や物価が安く抑えられる地域の開発企業にIT開発業務をアウトソースすることです。
*1 参考:「ブリッジSEとは? | 失敗しないブリッジSEの見極め方」
*2 参考:「ニアショアとは?オフショア開発との違い&メリットデメリット」
オフショア開発の目的は?
前述しましたが、オフショア開発の目的は、大きく分けて2つあります。1つは「コスト削減」、もう1つが「リソース確保」です。
2021年、2022年のアンケート結果では、新型コロナウイルスの影響による景気の低迷、コスト意識の高まりなどから、いずれもコスト削減がトップの回答でした。今年の結果は以下の図のようになりました。
オフショア開発を検討した理由(2023)
* 出典:「オフショア開発白書(2023年版)」
■ オフショア開発の目的①:コスト削減
長らくオフショア開発の主たる目的は「コスト削減」でしたが、ご覧の通り「開発リソースの確保」がトップの回答となりました。国内の人材不足が多くの企業で課題になっていることが伺える結果ともいえるでしょう。人材不足に伴い、「開発スピード」に課題がある、という回答も3番手につけています。
システム開発費用はエンジニアの人件費に拠るところが非常に大きいです。そのため、高騰する日本人エンジニアではなく、賃金が安い海外のエンジニアを活用することで人件費を抑えて、コスト削減を実現することができます。下記のデータを見ると、国内の開発ベンダに対して、価格を最大の課題として考えている発注企業が非常に多いことが伺えます。
国内開発企業に感じる課題(2023)
* 出典:「オフショア開発白書(2023年版)」
国内企業に目を向けると、課題は「価格」「リソース調達」「開発スピード」に集中しています。これらの課題は「国内の人材不足」に起因するところが大きいでしょう。人材が不足していることで、単価が高騰し、リソース調達も困難に…さらには開発スピードが上がらない、といった問題に繋がっています。
■ オフショア開発の目的②:リソースの確保
昨今のオフショア開発は、グローバルソーシングとしての意味合いがより大きくなっています。その背景として、国内の労働人口減少に伴い、IT人材の確保が大きな課題となっていることが挙げられます。特に国内の優秀なエンジニアはその希少性から単価も高騰していたり、複数のプロジェクトを兼務していることから疲弊してしまっているケースが非常に多いようです。
一方、オフショア開発先となる国においてはIT産業の成長が著しく、優秀なITエンジニアが非常に豊富になっています。成長著しいベトナムを中心に、AIやIoT、クラウド、ブロックチェーンなどの先端テクノロジーを活用した開発実績も増えており、技術力の面での懸念も払拭されてきました。つまり、プロジェクトベースで柔軟に必要リソースを供給できる体制が組めるオフショア開発企業が一般化してきたといえるでしょう。こうした背景から、ITリソース不足の問題に対して、グローバルに最適なリソースを確保して対応する企業が急増しているのだと思います。
経済産業省によると、2022年現時点ですでに20万人ものIT人材が不足しているという推計(*3)ですが、悲観的な見方だと2030年にはIT人材が約79万人足りなくなるといわれています(2030年問題)。国内のリソースだけでIT開発を完結させることは現実的ではない数字です。「グローバル人材の活用には少なからず経験やノウハウが必要」と考える企業を中心に、スモールでオフショア開発の導入が広まっています。これからはより普及期・拡大期に入ってくるでしょう。
*3 参考:「IT人材を確保するためには?!IT人材不足の現状と今後の見込みも解説」
おすすめのオフショア開発企業
オフショア開発を検討する際に、「どこの国でオフショア開発をするべきなのか?」といった声をよくいただきます。国によってエンジニアの人件費(単価)や文化や国民性が異なるので、確かに国についてもしっかりと考えることが望ましいです。
ですが、今はそれ以上に「企業別」でオフショア開発先を比較検討することが非常に重要です。IT人材が豊富なベトナムを中心に、日本向けにオフショア開発を提供するIT企業が非常に増えています。そこで何が起こっているかというと、受託企業間での競争が激しくなり、「差別化」が大きなテーマとなっているのです。
例を挙げると、次のようなイメージで各社の強みや得意領域が明確化しています。
・特定の技術領域に特化している(例:Rubyでの開発に特化、Webマーケティング領域に特化、クラウド構築に特化、など)
・非常に柔軟な開発体制の実現(例:即日ラボ体制構築、ラボをそのまま子会社化できる、月毎にリソース量の変更が可能、など)
・その他の差別化事例(例:とにかくコスト削減、提案時に無料でプロトタイプを開発、ITコンサルやサービス企画もサポート可能、など)
オフショア各社が自社の特徴・独自性・専門性を強めているので、発注者側にとっては選択肢が広がり、自社にぴったりの発注先が見つかる可能性が高まっているのです。オフショア開発に取り組みやすい環境ができあがり、多くの企業でオフショア開発を検討しやすい状況になったともいえるでしょう。こうした状況から、特定のオフショア開発企業を画一的にお勧めすることが難しくなっています。開発内容や実現したいことといった要件・要望から、最適な開発会社を探していくことが成功のポイントだと思います。自社にあった企業を探すのにお困りの際には、お気軽にオフショア開発. comにご相談ください。
ここでは、参考までに開発実績が豊富で、技術力や品質に定評があるオフショア開発企業を3社だけピックアップして紹介します。
インディビジュアルシステムズ株式会社
インディビジュアルシステムズは2002年創業と、ベトナムでは最古参の日系オフショア開発企業の1社です。これまで500以上のプロジェクトをすべて完遂しており、その規模感も1人月〜280人月と、小規模から中大規模まで幅広く支援してきました。同社はその経験・実績を、すべて成功のノウハウとして蓄えています。
最も得意とするのは業務系のシステム開発で、特に人事給与・勤怠管理システム、生産管理システム(販売・購買・在庫)は自社パッケージシステムを保有しているので、ビジネス理解に自信があります。
kintone(キントーン)、SAP(S/4 HANA)、IM(イントラマート)、電脳工場、といった各種システムについても、それぞれ専門の開発チームを構成しており、ビジネス領域の課題からも相談可能なオフショア開発企業です。
グローバルイノベーションコンサルティング株式会社
ミャンマーの日系オフショア開発企業として最大の規模を有するのが、グローバルイノベーションコンサルティング株式会社(GIC)です。ミャンマーはベトナムと比較してもコストメリットを実現しやすく、同社ではPG(プログラマー)30万円~、PM(プロジェクトマネージャー)60万円~の単価で提供しています。
GICの強みは、大量のエンジニアリソースと確かなIT技術力です。ミャンマートップのIT大学卒業生を大量に採用するGICでは、国内で不足する領域のエンジニアであっても、すぐに提供することができます。
同社では、日本人品質管理者がミャンマーに駐在し現地で品質管理を実施しています。また日本拠点とミャンマー拠点、それぞれで開発に必要な体制を構築することもできるので、体制構築からも柔軟にサポートを提供可能です。
株式会社アイディーエス(スマラボ)
アイディーエスが提供するオフショア開発サービス「スマラボ」は、日本とベトナムに拠点を持つことで、日本企業にとって最適なハイブリッド型オフショア開発サービスを提供しており、お客様のデジタルトランスフォーメーションを実現する上でのパートナーとして、開発プロジェクト運営まで、クラウド導入、デザインまで、ワンストップでWebサービスの開発を支援しています。
特に、オフショア開発において難易度が高いプロジェクト運営や品質管理に関してノウハウを持ち、これまでオフショア開発に失敗した企業においても、再度オフショア開発に取り組めるよう体制・プロセス・仕組みを標準化し、お客様のDXパートナーとしてオフショア開発を支援しています。
Webサービスの開発/業務システムの開発を中心に、PHP/Java/Python/AWSなどの技術要素を活用しながら、お客様の様々なニーズに答えています。
上述の通り、オフショア開発の成功のポイントは、開発内容や実現したいことといった要件・要望から、最適な開発会社を探していくことです。オフショア開発. comはオフショア開発専門の発注先選定支援サービスとして、10年以上運営・6000件以上の相談実績がございます。自社にあった企業を探すのにお困りの際には、お気軽にオフショア開発. comにご相談ください。