最終更新日:2023/09/07

MVP開発とは?ビジネス上のメリット・デメリットと事例

記事「MVP開発」のイメージ画像

ビジネス環境の変化が著しい今、開発においてもスピード感が非常に重要となっています。

サービスローンチまでではなく、サービスを改善する際にもスピードを求められる今、注目を集めている手法が「MVP開発」です。

このテキストではMVP開発の基礎知識やノウハウ、メリットやデメリットなどを詳しく解説。実際の事例についてもご紹介します。

INDEX

1. MVP開発とは
 - リーンスタートアップとは
2. なぜMVP開発が求められるのか?
3. MVP開発のメリット
4. MVP開発のデメリット
5. MVP開発の代表的な手法を紹介
 - プロトタイプ
 - オズの魔法使い(Wizard of Oz)
 - コンシェルジュ
 - スモークテスト
6. MVP開発したプロダクトの事例
 - Instagram
 - 食べログ
 - Airbnb
7. まとめ

MVP開発とは

MVP開発のMVPとは、「Minimum Viable Product」のことであり、これは「最小限の実用可能な製品」という意味です。MVPの概念は2001年にフランク・ロビンソンが考案したものです。

 

完全な製品を最初から目指すのではなく、必要最低限の機能だけで作られた製品をリリースし、ユーザーのフィードバックを見て改善を繰り返すというのがMVP開発です。

 

つまり、製品開発と顧客開発を並行してすすめた結果がMVPであり、フランク・ロビンソンはこの製品開発と顧客開発を並行してすすめる開発手法を同期開発(synchronous development)と呼びました。

 

「リーンスタートアップ」の著者であるエリック・リースと、リーンスタートアップの基礎を作ったスティーブ・ブランクによって、MVP開発は広く知られるようになりました。

 

■リーンスタートアップとは

リーンスタートアップとは、スティーブ・ブランクの顧客開発方法論に基づいて作られた、ビジネスモデルや製品開発のための方法論のこと。顧客のフィードバックを重視し、柔軟に顧客のニーズを見たすための改善を繰り返すことで市場リスクが軽減でき、結果的にコスト削減にもつながるという考え方です。

なぜMVP開発が求められるのか?

これまでの開発プロセスは、企画を作り込み、社内でのフィードバックで改善され、そこから開発を行い、企画通りの製品をリリースする、という流れが一般的でした。

MVP開発は最小限の機能だけで製品を作り、実際に顧客に使ってもらってフィードバックを得ることで製品を仕上げていく、という手法が取られます。

市場のスピード感にも合わせられる上に、実際に使ったユーザーの意見を取り入れて製品を作り上げていくため、結果的に顧客にとって本当に必要な製品を作ることができるのです。

MVP開発のメリット

MVP開発ではユーザーのフィードバックをもとに製品を完成させていくため、顧客や市場のニーズを正確に把握することができます。また、ニーズがわかれば無駄な機能を開発することはありません。機能を絞って集中的に開発することで、開発に要する時間とコストを最小限にすることができます。

製品の提供が速やかに行われることで、収益化もその分早くなります。ライバルに先駆けて市場にリリースできれば、市場で優位に立つことができるというメリットもあります。

MVP開発のデメリット

最小限のスタートで始めるMVP開発は、複雑な機能を要する開発にはあまり向いていません。また、改善のサイクルを繰り返す中で、そもそも最初の方向性が間違っていたということになれば、大幅な変更でコストや時間が思ったよりもかかってしまう、なんてことにもなりかねません。

 

クラウドAPI統合プラットフォームを提供する企業Cloud Elements社のCEOであるマーク・ジーン氏によると、MVPにおいて開発する機能は2ヶ月以内に作ることができるものが望ましいとされています。

MVP開発の成功のポイント

MVP開発は、最低限の機能を実装した製品をリリースして顧客のフィードバックから改善のサイクルを繰り返す手法であるため、最初から完璧な製品を作る必要はありません。完璧主義の担当者には違和感のある開発手法かもしれませんが、完璧なものを作るための手段としてMVP開発を位置づけるとよいでしょう。

 

MVP開発において最初にリリースする最低限の機能を考える上では、オピニオンリーダー(アーリーアダプター)のニーズを参考にし、実装する最低限の機能をどのようなものにするかを決めるとよいでしょう。

オピニオンリーダー(アーリーアダプター)とは、流行に敏感で、自ら積極的に情報収集を行った上で購入を決定する消費者層であり、他の消費層への影響が大きいため、マーケティングを行う上で重要なターゲットとなる層です。

オピニオンリーダーのニーズを参考にすることで、市場に適した製品開発を行うことができます。

 

また、開発手法についても相性があるので注意してください。例えばウォーターフォール開発は開発自体のコンセプトがMVP開発とは真逆なので非常に相性の悪い手法と言えます。アジャイル開発はMVPの概念ととても相性のよい開発手法と言えるでしょう。

 

アジャイル開発とは開発するソフトウェアの機能を細かく分類し、それぞれに短い開発期間単位を採用する開発コンセプトのことで、機能ごとに短い開発期間を繰り返すことで一つ一つの機能を開発していくのが特徴です。この開発サイクルの反復のことをイテレーションやスプリントと呼びます。

* 参考:アジャイル開発とは?|適したプロジェクトと契約形態も解説

MVP開発の代表的な手法を紹介

MVP開発にはさまざまな開発手法があります。中でも代表的なものが「プロトタイプ」「オズの魔法使い」「コンシェルジュ」「スモークテスト」の4つです。

 

■ プロトタイプ

MVPの開発手法でもっとも一般的なのが「プロトタイプ開発」です。実際に動く試作品を作るため、MVPのなかではコストが割高になる傾向があります。

今や誰もが知るウェブサービス「Twitter」もプロトタイプ開発で作られました。

参考:開発手法比較でわかるプロトタイプ開発|メリットデメリットと向いている開発案件

■ オズの魔法使い(Wizard of Oz)

プロトタイプは実際に動く試作品を作りますが、「オズの魔法使い」はウェブサービスの注文画面だけを作り、実際の購入作業などは人間が行う、という方法です。

大魔法使いだと思われていたオズの魔法使いが実はただの人間だった、という児童文学から来ているネーミングですが、「オズの魔法使い」と言えば主人公のドロシーが魔法の靴を使うシーンが印象深い物語です。

この手法を利用した事例として有名なのが靴の通販サイト「Zappos」です。この手法に靴の事例とは少し出来すぎている気もしますが、「Zappos」は靴の画像を掲載した商品ページだけを作成し、注文が入ると創業者が靴を実店舗で購入し、発送していたのだとか。

 

■ コンシェルジュ

製品開発の前段階で、サービスや製品への需要を人力で検証するのが「コンシェルジュ」という手法です。ユーザーの好みと近隣のセール情報をもとに献立を考えてくれるサービス「Food on the table」はスーパーマーケットに買い物に来ていた主婦にサービス内容を見てもらう、というコンシェルジュMVPを実施しました。

 

■スモークテスト

ユーザーが製品やサービスに興味を持つかどうか、検証するのがこの「スモークテスト」です。紹介動画や事前に登録できるフォームなどを作り、実際の反応を見ます。

オンラインストレージサービス「Dropbox」は紹介動画を作成し、その効果でβ版利用者が一晩で15倍に増えました。

MVP開発したプロダクトの事例

前項でもそれぞれの手法を使った事例をご紹介しましたが、他にもMVP開発を行ったプロダクトは多数あります。

 

■ Instagram

インスタ映え、という言葉でおなじみの「Instagram」は、MVP開発によってもともとのコンセプトを大きく変えたアプリです。もともと位置情報アプリ「Burbn(バーブン)」としてリリースされたものでしたが、数名のユーザー以外は全く使ってくれない、という残念な結果に。使ってくれているユーザーが写真共有として利用していることから、写真共有アプリとして生まれ変わったのが「Instagram」でした。

 

■ 食べログ

食べログは前述した「Zappos」と同じ、「オズの魔法使い」で開発されたサービスです。もともとは手打ちで作られたグルメ情報のデータベースであり、その内容はグルメ本をもとにしたものだったとか。

改善要望が書かれる掲示板のフィードバックに合わせて改善を繰り返した結果、今のような口コミサイトへと変わっていったのだそうです。

 

■ Airbnb

「Airbnb」はコンシェルジュ手法を使い、写真撮影サービスを開発しています。サービスを導入する前にはカメラマンを使ったMVPを実施。テスト結果をもとに開発を進め、サービスをリリースしました。

まとめ

市場のスピード感に対応できる手法であり、結果的にコスト削減にもつながるMVP開発は今もっとも注目されている開発手法の一つであり、MVP開発を実施したいという企業も近年増加傾向にあります。MVP開発は経験豊富な少数精鋭部隊で開発を開始するのが望ましいとされているため、開発人材は厳選したいところ。

国内の人材不足と人件費の高騰は深刻な問題となっており、経験豊富な人材と人件費のコスト削減を求めて、海外に目を向ける企業が増えています。

 

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